2025年9月4日放送のカンブリア宮殿で老舗日本酒メーカー「大関」の変革と挑戦について紹介されました!
「大関」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、あの緑色の小瓶「ワンカップ大関」ではないでしょうか。
手軽さと親しみやすさで国民的銘柄となったワンカップですが、創業300年を超えるこの老舗日本酒メーカーが今、静かに、そして力強く「変革と挑戦」を続けているのをご存じでしょうか。
日本酒業界全体が売上減少、若者のアルコール離れ、酒米価格の高騰といった厳しい逆風に直面する中、「大関」は伝統を守りつつ、新たな未来を切り拓くための「逆襲」を開始しています。
老舗日本酒メーカー「大関」の変革と挑戦
国民的銘柄「ワンカップ大関」がもたらした功績と弊害
1964年に発売された「ワンカップ大関」は、まさに時代の「先駆け」でした。
一升瓶が主流だった当時、蓋を開けてそのまま飲める「手軽さ」と「便利さ」で大ヒットし、会社の礎を築いた画期的な商品です。
東京オリンピックの開催に合わせて、グローバルな商品にしようと商品名もアルファベットにしたというエピソードも残っています。
しかし、その強すぎるブランドイメージが、皮肉にも「ワンカップ以外の商品の認知度不足」という“弊害”を生んでしまったと、現在の社長は語ります。
かつて売上の約4割を占めたワンカップは、現在3割に減少。この状況に対し、「特別ヒット商品があるのは会社の危機である」という認識を持ち、大関は新たな道を模索し始めたのです。
14代目女性社長 長部 訓子氏の決断
大関の変革を牽引するのは、創業家14代目にして初の女性社長、長部 訓子氏(68歳)です。
彼女が社長に就任したのは8年前のこと。当時、会社は2度にわたる人員削減を実施し、3度目のリストラの危機に瀕していました。
「会社をなくしたくない」という一心で2017年に社長に就任した長部氏 は、「変える勇気が未来を作る」という会社方針を掲げます。
未来に向けた技術の伝承と、新しい酒造りの必要性を強く感じていたのです。
特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、彼女に「原点回帰」のきっかけを与えました。
社内に残されていた古い商品企画委員会の議事録ノートに熱量を感じ取り、2023年には商品開発に関わる営業や製造など様々な部署の社員が集まる会議を復活させ、部署横断での商品開発を強力に推進しています。
ワンカップの殻を破る戦略
大関は、ワンカップのイメージを払拭し、新たな価値を創造するために、多角的な挑戦を続けています。
高級路線へのシフト
大衆酒のイメージを覆し、日本酒通も支持する「本格派の酒造り」に注力。
兵庫県産山田錦を使い、3,000円を超える純米大吟醸「創家 大阪屋」は、フランスの日本酒コンクールで数々の金賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
「みぞれ酒」による新しい飲み方の提案
おなじみのワンカップを-15℃で冷やし、数回衝撃を与えることで、日本酒がマジックのようにシャーベット状に変わる「みぞれ酒」を提案。
この新しい飲み方は「飲みやすい」と若者や女性を中心に人気を集め、新たな顧客層の開拓に成功しています。
商品の多様化と食品事業への展開
香りを高め、ワイン感覚で味わえるオーガニック純米吟醸「#J 有機米使用純米酒」をリニューアル。
スパークリング日本酒、フルーツのお酒、フローズンカクテル、夏桃やパインを使った濁り酒など、新ジャンル商品を次々と開発。
さらに、甘酒鍋の素や酒粕入り肉吸いの素といった食品事業にも参入し、市場を拡大しています。
科学の力による酒造り 経験や勘に頼りがちだった酒造りを科学的に行うため、1980年には総合研究所を設立。
京都大学や大阪市立大学の大学院で微生物学を専門に学んだ若手研究員約20人が、酵母の研究を通じて「味づくり」を科学的に分析し、バランスの取れた商品を開発しています。
斬新な飲用シーンの提案
商品開発会議からは、日本酒の新しい飲み方も次々と生まれています。
おでんの出汁割りからヒントを得た「ラーメンスープ割り」は、人気ラーメン店のスープで日本酒を割るという斬新なアイデア。
実際に試飲した社員からは「めっちゃうまい!」と絶賛され、営業部も取引先ラーメン店での展開に手応えを感じています。
グローバルな「大関」へ
国内市場が伸び悩む一方で、大関は海外市場で好調を維持しています。
現在、約50の国と地域で販売されており、特にアメリカでは日本酒メーカーとして3番手のポジションを確立しています。
海外専用商品として、蜂蜜のような甘さが特徴の純米大吟醸「SakuraBeauty45」を投入。
さらにレストランなどでも提供しやすい300mlの小瓶をアメリカ市場に売り出し、シェア拡大を目指しています。
世界のアルコール市場における日本酒のシェアはまだ0.1%程度とされ、大きな伸びしろがあると見られています。
ワンカップ発売時の「海外に広めたい」という思いは、今も脈々と受け継がれているのです。
「先駆け集団」の精神が織りなす歴史と未来
大関の根底にあるのは、創業以来受け継がれてきた「先駆け集団への誓い」という精神です。
冷蔵庫がない時代に「冷やして飲む酒」を提案したり、ワンカップを開発したりと、常に顧客ニーズや社会の変化を読み取り、時代を先取りしてきました。
長部社長の就任から8年で利益は約3倍に増加するなど、こうした変革への取り組みは着実に成果を上げています。
「100個か1000個のアイデアから1個のワンカップが生まれたように、挑戦し続けることが重要」という長部社長の言葉は、まさしくこの「先駆け集団」の精神を体現しています。
創業300年を超える老舗「大関」は、ただ伝統を守るだけでなく、「新しい伝統を作る」という難しい挑戦に挑み続けています。
その挑戦は、日本酒業界の未来、そして日本の食文化の未来を明るく照らすものとなるでしょう。
まとめ
「特別ヒット商品があるのは会社の危機である」という認識のもと、積極的に変革に乗り出している点に、老舗でありながらも現状に安住しない強い意志を感じます。
勘と経験に頼りがちだった酒造りに科学的なアプローチを取り入れている点も、伝統を守りつつ、より安定して高品質な商品を生み出そうとする真摯な姿勢が伝わってきますね。
「先駆け集団」という言葉は、大関の歴史と未来を象徴しているように感じます。
冷蔵庫がない時代に「冷やして飲む酒」を提案したり、一升瓶が主流の時代にワンカップを開発したりと、常に時代の先を読み、新しい挑戦を続けてきた歴史が、現在の変革へとつながっていることがよくわかります。
国内市場が縮小する中で、グローバルな視点も持ちながら、新しい伝統を創造しようとするその取り組みは、日本酒業界全体の未来を明るく照らす可能性を秘めていると感じました。